光ダクトとは? 窓のない部屋に自然光を導く仕組みを事例写真で解説
- 鋼鈑商事株式会社 建材事業部

- 2018年2月2日
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更新日:5 日前
光ダクトとは?
光ダクトとは、内側を反射面とした管(ダクト)を利用して自然光を建物内部に取り込み、室内照明として利用する建築構造で、光ダクトシステムとも呼ばれます。
光ダクトは、建築的に採光装置や昼光利用設備といったカテゴリーに分類されます。
内側を反射面とした管そのものを指して光ダクトと呼ぶ場合もあります。

光ダクトは、管の一方の端から自然光を取り込み、内部で反射を繰り返すことで光を運び、もう一方の端から自然光を放射します。この仕組みにより、光ダクトを建物に設置することで、窓のない部屋や窓から離れた奥まった場所にも自然光を届けることができます。
光ダクトは電気を使わず、自然光だけで室内を明るくするエコロジーな照明設備です。電気で動く部品がなく、反射面が汚れにくい構造になっているため、メンテナンスの手間がほとんどかかりません。
オフィスビルや工場などの省エネ設備として活用されているほか、環境教育の一環として学校に設置されたり、商業施設ではデザイン性を高めるために導入されることもあります。最近では一般住宅への導入も増えており、暗い部屋を明るくする方法として広く認知されつつあります。
光ダクトのメリット
光ダクトの最大のメリットは、自然光を利用している点です。LEDのシーリングライトやダウンライトなどの人工照明とは異なり、柔らかく自然な光の印象を得ることができます。
光ダクトで取り込まれる光は屋外の明るさに左右されるため、天候や時間帯による光の変化を室内にいながら感じることができます。これにより、屋外とのつながりを感じられる空間や、デザイン性の高いインテリアを演出することが可能です。そのため、光の取り入れ方にこだわる建築家設計の住宅などでも活用されています。
電気を使わないため電気代がかからず、さらにメンテナンスフリーの構造により、維持費もほとんど必要ありません。一般的な照明器具では、電気代のほかにランプや器具の交換が必要ですが、光ダクトは長期間にわたって安定して使用できます。
また、停電時でも完全に暗くなることがないため、非常時の照明としても有効です。特に窓のない中廊下や地下などでは、電気式照明が使えなくなると真っ暗になってしまいますが、光ダクトなら曇りの日や朝夕の薄明かりでも、わずかな自然光を取り入れることができます。
光ダクトのデメリット
光ダクトのデメリットとしてまず挙げられるのは、建物内に光ダクトを通すためのスペースが必要になることです。設置には専用の空間を確保しなければならず、その分居住スペースが減ってしまうため、部屋が狭く感じられることがあります。天井裏を利用する場合でも、高さの調整が必要になるケースがあります。
また、光ダクトは屋外の明るさに左右されるため、照度が安定しないという欠点もあります。常に一定の明るさが求められる場所には不向きであり、夜間には光が届かないため、別途照明器具が必要になります。
さらに、初期費用が高い点もデメリットの一つです。光ダクトに使用される反射板は高価で、部材も一般的な照明器具に比べて大掛かりになる傾向があります。加えて、まだ十分に普及していないため、設置コストが高くなりがちです。
そのため、効率よく光を取り入れるためには、光ダクトのサイズや設置方法を工夫する必要があります。
光ダクトの基本構造

光ダクトの基本的な情報について説明します。
光ダクトの構成
光ダクトは、以下の3つの要素で構成されています:
採光部(さいこうぶ)
屋外の自然光を取り込む部分で、一般的には窓や天窓(トップライト)が該当します。
場合によっては、太陽光を追尾する装置や、光の反射・屈折を利用した特殊な採光装置を設置することもあります。これにより、より多くの光を取り込んだり、季節や時間による光の変化を抑えることができます。
導光部(どうこうぶ)
採光部で取り込んだ光を運ぶための管状の部分です。
この部分自体を「光ダクト」と呼ぶこともあります。
素材には、加工しやすく安価な鋼板やアルミニウム板が使われ、表面には銀やアルミニウムなど反射率の高い金属を施して鏡面仕上げにすることで、効率よく光を反射させます。
放光部(ほうこうぶ)
導光部を通ってきた自然光を室内に放射する部分です。
暗い部屋など、光が必要な場所に設置されます。光を効率よく拡散させ、かつ光ダクトの部材が見えないようにするために、半透明の乳白板や凹凸加工された樹脂板・ガラスなどが使われます。
放光部の位置は、天井や壁など、建築やインテリアのデザインに応じて自由に調整可能です。また、管の末端だけでなく、光ダクトの途中に開口部を設けて放光部とすることもできます。
光ダクトの形状
光ダクトは、通常丸型または角型の管状で構成されており、管状に加工された部材を接続して形成されます。大規模な光ダクトでは、壁で囲った空間に鏡面仕上げの板やパネルを貼り付けて、光を導く構造にする場合もあります。
光ダクトは、曲げたり分岐させたりすることが可能で、建物の構造に合わせて自由に形状を設計できます。
代表的な形状には以下のようなものがあります:
・垂直型光ダクト
屋上や屋根の天窓から光を取り込み、垂直に設置して下の階まで光を届けるタイプ。
・水平型光ダクト
壁面の窓から光を取り込み、天井裏などを通して水平に光を運び、窓から離れた部屋に届けるタイプ。
・L字型光ダクト
建物の構造に合わせて光ダクトを曲げて設置するタイプ。
ただし、反射率の高い素材を使用していても、光の反射率は100%ではありません。そのため、導光部が長くなるほど、また曲がりの多い構造になるほど、光の量は徐々に減衰してしまいます。このため、光ダクトは比較的シンプルな垂直型や水平型が多く採用されています。
光ダクトの設置方法
光ダクトを建物に設置する方法は、大きく分けて2つあります。
1. ダクト加工製品を設置する方法
これは、空調用ダクトと同様の構造を持つ光ダクト部材を建物内に据え付ける方法です。
空調ダクトと同じ接合・取り付け方法が使えるため、経験のある施工者であれば、短時間で設置が可能です。接合部は密閉性が高く、開口部を透明なアクリル板などで塞ぐことで、内部にほこりが入らず、劣化しにくい構造になります。
2. 空間そのものを光ダクトとして利用する方法
この方法では、壁面に光ダクト用の反射板を貼り付けて、空間全体を光ダクトとして機能させます。
ダクト加工では対応できないような大きな光ダクトも形成可能です。ただし、反射板を取り付けるための下地を細かく作る必要があり、反射板も1枚ずつ丁寧に貼っていくため、施工には時間がかかります。
光ダクトの設置方法は、サイズや予算、工事期間などを考慮して選定されます。
光ダクトの導入事例
光ダクトの導入事例の一部を建築用途ごとに紹介します。
光ダクトの学校事例
〇岩国市立玖珂小学校
学校に光ダクトを導入し、階段踊り場を明るくした事例です。
1Fの天井放光部だけでなく、2F、3Fにも壁面の放光部を設けることで、1本の光ダクトで各階を明るくしています。

屋上に設置したトップライトを採光部として、光ダクトに光を取り込んでいます。安全上の観点から、周囲に策を設けています。

1Fの放光部から、光ダクトを見上げた写真になります。垂直型のため、まっすぐ採光部と空が見えています。
2F、3Fにも放光部のためのダクト開口が設けられています。

1F天井放光部の写真です。比較的大きな空間ですが、大きな光ダクトのため十分な明るさが得られています。放光部を天井面で仕上げているため、すっきりとした印象となっています。

光ダクトの商業施設事例
〇みやざきアートセンター
商業施設に光ダクトを設置して、建築のデザインの一つとして利用した事例です。
垂直型のダクトで、1Fの天井放光部だけでなく、各階にもスリット状の放光部を設けて、アクセントにしています。

この導入事例では、直射光をあえて入れないように設計されていて、光ダクトの採光部は建屋の影になるテラスに設置しています。
また、この光ダクトはデザイン性を重視し、円筒型で作成しています。

光ダクトを壁内内に隠すのではなく、円筒型のダクトに仕上げをすることで吹き抜けを貫通する柱のような意匠になっています。
階段の高さに合わせて開口部を設け、放光部の素材を透明にすることで、光ダクトの内側が見えるデザインになっています。

放光部は、2層吹き抜けの上部に位置しています。
空間自体が広く、屋外からの光も十分に得られる箇所ですので、光ダクトからの強い明るさを感じることはできません。
ですが、下から放光部を見上げた時に、空が見えるようになっていて、建築物内でも屋外を感じるられるようにしています。

光ダクトの住宅事例
〇木造一戸建て住宅
既設の木造一戸建ての一般住宅に全体のリフォームに合わせて光ダクトを導入した事例です。
壁窓を採光部として、水平型光ダクトを設置し、明るくしたいリビング上部で曲げ、天井面放光部としています。

瓦屋根の住宅で、雨漏りの心配のある天窓を使わずに、壁から採光しています。
軒の出が多少あるため、太陽高度の高い夏場はあまり光が入りません。

光ダクトを設置した小屋裏の様子です。リフォームでしたが、広い空間があるため、光ダクトの設置スペースも問題になりませんでした。

天井放光部の写真です。
太陽高度の低い冬場から中間期にかけて十分な明るさがとれています。

光ダクト導入の流れ
光ダクトの導入の流れをご説明します。
プラン検討
はじめに光ダクトのプランを検討します。
光ダクトは、設置のプランによって効果が大きく変動します。自然光を利用した照明ですので光量の予測が難しく、設置後に十分な効果が得られない、ということにもなりかねません。そのためプランの検討が最も重要になります。
光ダクトは採光部と導光部、採光部により構成されていますが、光ダクトによる明るさが欲しいお部屋や廊下に放光部をまず配置します。次に、導光部の経路を考えつつ、採光部となる窓や天窓の位置を配置します。
経路が決まったのち、光ダクトの大きさを決めます。光ダクトの大きいほど光を多く取り込めるので、できるだけ大きな光ダクトとしたいですが、建築的な制約や予算などを考慮する必要があります。
このとき、プラン内容について、お部屋の明るさが十分に得られるかどうかを、専用ソフトを用いたシミュレーションを行います。シミュレーションについては、それぞれの光ダクトメーカーのノウハウを持っています。シミュレーションで光ダクトの大きさの妥当性を検証してプランを決めます。
設計図面作成
住宅会社や建設会社の設計者と協議して、建築図面に光ダクト及び窓や天窓、放光部の仕上げなどの周辺部材を落とし込みます。
検討した光ダクトのプランが、建築構造上設置が難しい場合には、光ダクトのプランを再検討するなどしてプランを確定います。
通常、設計図面を作成した時点で費用もおおむね確定しますので、効果と費用を含めて検討して導入の可否が決まります。
工事計画
工事会社と相談して具体的な設置工事の計画を立てます。
リフォームの場合は、工事の時期や期間なども合わせて協議を行う必要があります。
設置工事
工事計画に従って工事会社に工事いただき、無事設置できれば導入完了となります。
まとめ
光ダクトの基本的な構造や目的、用途などについて解説しましたが、ご理解いただけましたでしょうか?
窓がない部屋にも自然光を取り入れる光ダクトは、学校や商業施設などの非住宅の建築物だけでなく、一戸建て住宅にも導入され始めています。
窓があっても日中電気の照明を点けて生活しなければならない、部屋が暗くてお困りの方は、是非一度検討してみてはいかがでしょうか。


































































