建物の設計業務をされている方で、
建築に新しい技術を取り入れたい
暗くなりそうな室内を明るくしたい
人目を引くような空間演出のアイデアが欲しい
というようなことでお悩みなら、「光ダクト」を検討してみてはいかがでしょうか?
本記事では、光ダクトを導入する際の建物の種類とメリット、光ダクトを設計に取り入れる際の注意点などについて解説しますので、ご検討されている方は是非ご参考ください。
光ダクト導入のメリットが大きい建物は?
光ダクトは、外壁や屋根に面していない空間に自然光を届けるための建築構造です。
光ダクトの性質上、十分に大きな窓のある部屋のように直接窓から十分な自然光を取り入れることが可能な空間には、光ダクトは適しません。
光ダクト導入には当然費用がかかりますので、せっかく導入するのならメリットの大きい建物の方が効果的です。
実際に光ダクト導入してメリットの大きかった建物の種類をご紹介します。
学校
鋼鈑商事の光ダクト「どこでも光窓」でも、多くの導入事例があります。
学校への光ダクトの導入は、建物の暗い箇所を明るくするという基本的な効果のほかに、環境教育の一環としての効果が大きいようです。
学校に通う生徒に、環境に配慮した建築の技術から、省エネや建築について触れてもらうことで、環境について学ぶことを目的としています。
導入した大学の学生から、光ダクトについて研究してみたい、というお問い合わせをいただいたこともあります。
最近の学校は、変わったデザインや環境に配慮するなどの様々な目的で工夫した建物が多く見られるようになっていますので、使い方次第では光ダクトを使って大きな効果を得られます。
商業施設
ショッピングセンターなどの商業施設も、光ダクトを導入するのメリットは大きいです。
商業施設は、より印象に残るようにしたり、開放感がある過ごしやすい空間作りが求められていて、自然光を取り入れることへの要求はあります。
ただし、商業施設では安全のため、一定の照度が確保されていて、屋外の天候によって明るさが変化する光ダクトを照明として用いることには向きません。
光ダクトというよりも、光ダクトの技術を応用して建築の吹き抜け部分をより明るくしたり、自然光を使ってオブジェクトなどを照らした空間演出などをする方が効果的です。
また、光ダクトは停電時の非常照明とするような安全対策として用いることもできます。
光ダクトは、明るさだけでなく、空間演出、安全防災などの観点で取り入れるメリットがあります。
戸建住宅
戸建住宅は、そこに住む方からの切実な要望があり、最もメリットの大きな建物です。
住宅密集地や周囲の環境によって、暗い部屋がどうしても出来てしまいます。
建てた段階では日差しが十分に差し込むお部屋でも、南側に家が建つことで急激に日当たりが悪くなってしまうことも多くあります。
日中で外が十分に明るいうちから、室内は電気を点けなければならない、というのは省エネの観点からだけでなく、気分的にも良くない、と感じる方もいます。
周辺環境でどうにもならない日当たりを改善できる光ダクトは、戸建住宅にもっとも大きな効果があるのです。
光ダクト形状の設計に関する注意点
建物に光ダクトをより効果的に取り入れるためには、工夫が必要です。
光ダクトは、反射率95%程度の素材を使用していますが、これは1回光を反射するごとに5%光量が低下してしまうことを意味しています。
光ダクトの設計には、光の反射回数を減らすような形状設計が必要です。
光ダクトの設置費用もありますので、できるだけ効率が良く、効果が高いように設計する方法をお教えします。
短く、大きくが基本
光量の低下を抑えるためにできるだけ光を反射させないようにするためには、光ダクトをできるだけ短くするのが最も効果的です。
そして光ダクトの径を大きくすることでも、同様に反射を減らせます。非常にシンプルですが、短く、大きくが基本となります。
曲げは極力作らない
光ダクトで90°曲げを1箇所つくると、同じ長さの光ダクトと比べ、おおよそ10~20%程度光量が低下します。
これは曲げた箇所周辺で角度を変化させるために数回程度の反射を生じてしまうことが原因です。
角度を変えなければならない場合には、出来るだけ曲げ角度を小さくゆるく曲げると光の減少が少なくなります。
放光部を2つ作ると光量も半分ずつに
光ダクトは、自然光を離れたところまで導く、あるいは、1つの採光を広い範囲で利用するためのものですが、採光量の総量を増やすわけではありません。
採光部で得られる面積分の光を、反射による減少も加味し、放光部の面積や放光部箇所数で分けることになります。
2箇所の放光部を作る場合には、それぞれの放光部が1箇所の時の半分程度になります。
途中で小さくなるのはNG
大きな採光部で多くの自然光を取り込み、小さな光ダクトに集光するように利用したい、というお問い合わせを多くいただきますが、このような形状は通常の光ダクトではできません。
原理的には集光も可能ですが、太陽の位置は常に動いているため、太陽光を集光して利用できる条件がごく短い期間となるためです。
太陽の向きに採光部を常に向けるような追尾装置と組み合わせることで可能となりますが、固定された光ダクトではできません。
また、光ダクト導光部の途中で小さくなるような構造も、同様に入射される光の向きが様々のため光量の減衰が大きくなるのでお勧めしません。
建物と合わせて光ダクトを設計する
当然、採光部の位置や光が欲しい箇所までの距離が遠くて光ダクトが長くなったり、ダクトスペースが取れずに光ダクトを大きくできない、あるいは、曲げるなどの工夫をしなければならないことも多くあります。
光ダクトを既存の建物や設計の終盤で導入することが難しい原因がここにあります。
光ダクトを効果的に利用する場合には、基本設計の段階からある程度光ダクトを考慮しながら設計する必要があるのです。
とはいえ、求められる光量や用途によって形状についての要件も大きく変わります。
ですので、無理に効率の良い作り方をする必要はありませんが、費用を抑える意味でも効率良く光ダクトを設計することが重要です。
光ダクト周辺部材の設計に関する注意点
光ダクトの形状でおおよその光量は決まりますが、周辺部材によってせっかくの光量が減少したり、デザインを損ねたりしてしまうこともあります。
ここでは、光ダクトに適した周辺部材についてお教えします。
採光部は透過率の高いガラスを用いる
採光部として利用する窓やトップライトに用いるガラスは、できるだけ透過率の高いものを用いた方が、得られる光量が多くなります。
断熱性・遮熱性を考慮したLow-eガラスなどが用いられることも多くなりましたが、採光部分の面積がそれほど大きくないようであれば、通常の網入りガラスや高透過ガラスなどを用いた方が、光ダクトの効果は大きくなります。
放光部の拡散素材は空間に合わせる
放光部も高透過率の素材にした方が光量は多くなりますが、透明素材ですと太陽直射光の反射した光がそのまま出てしまい、空間のイメージに合わなくなってしまうこともあります。
透明性のある材料で光の直射感を出すのか、障子のように柔らかい光として出すのか、といった空間のイメージに合わせた素材感と透過率を合わせて設計しましょう。
まとめ
光ダクト導入のメリットを大きくし、効率の良い光ダクトを設計する注意点としては、
建物と合わせて光ダクト形状を考え、なるべく短く大きいシンプルな形状にする
採光部や放光部の透過率も考慮し、空間のデザインと合わせた周辺部材を選択する
光ダクトはユニークな構造ですので、光ダクトを効果的に利用して、明るさ以外の価値が生じるような設計をしてみてください。
光ダクトについてご相談いただければ、過去事例なども合わせて設計にご協力いたしますのでお気軽にご連絡ください。