住宅の日当たりによる快適性を考える上で重要な、西日(にしび)。
西日は、単にまぶしいというだけでなく、いくつかのデメリットがあり、その対策は非常に重要です。
「日当たりは良い方がいいけど、西日や嫌だ」、という方へ西日について説明するとともに、手法ごとの西日対策についても紹介します。
西日とは?
西日について
西日(にしび)とは、南中時を過ぎて西に傾いた太陽、または、午後の日ざしを指します。
西日の特徴として、南西から西の方位から差し込む光であることや、太陽の直射光であるため強い光であることがあげられます。さらに、太陽高度が低い時間の光のため、差し込む角度が非常に浅く、お部屋の奥まで届くといった特徴もあります。また、南中時と比べて、やや赤味がかった光の色をしていることなどがあります。
西日のデメリット
西日の特徴から、住宅や居住者に対して次のようなデメリットを生じてしまいます。
〇まぶしい
日没直前の西日は、ほぼ水平に光が差し込むことになります。そのため、普段は見上げなければまぶしさを感じない太陽の光も、その時間帯は西日の方に目を向けるだけで太陽の光が目に入ります。
リビングのような座ることを前提としたお部屋では、西日への対応をしないとまぶしくて非常に居心地の悪い空間になってしまいます。
〇お部屋が暑い
本来はお昼の南中時が最も太陽光が強いので西日が特に暑い、ということはありませんが、気温が高い午後から夕方にかけて西日が差し込むため、西日が暑いと感じてしまうことが多いようです。
さらに、太陽高度の高い時間の光は、庇(ひさし)やバルコニーなどがあると直射光が遮られるため室内に入りにくいですが、西日は浅い角度で入射します。そのため対策が難しいことも西日が暑い理由です。
お部屋が暑くなると当然快適に過ごしにくくなりますし、冷房のための電気代もかかってしまいます。
〇人体や室内が日焼けする
西日にかぎらず、太陽の日差しにも、紫外線が含まれています。そのため西日を浴び続けると、住む人に対して紫外線による健康に害を生じます。さらに、壁や家具なども日焼けによって劣化してしまいます。
人体への影響については言うまでもなくない方がいいですし、室内も劣化によって見栄えが悪くなったり、壊れやすくなったりして、買い替えに余計な費用がかかってしまいます。
住宅の西日対策
住宅への西日の悪い影響を避けるための対策をご説明します。
室内側の対策
最も簡単に行える方法が室内側の対策です。
〇カーテン、ブラインド、ロールスクリーン
同様に窓上部にそれぞれの器具を取り付けて、窓の室内側にカーテンやブラインド、ロールスクリーンを配置することで西日を遮ります。種類や遮蔽方法は異なりますが、効果は概ね同じです。
デザインや性能は様々ですので、効果やお部屋のイメージも合わせて選択しましょう。
西日が一度室内に入るので、室温が上がってしまう可能性があります。そのため夏は室内の空調負荷が高くなります。
カーテンレールなどがありそのまま設置できたり、DIYで設置することもできますが、きれいに仕上げたい場合は専門の工事業者にお願いしましょう。
〇遮光フィルム
室内側から窓にフィルムを貼ることで西日を緩和します。
フィルムによって遮光や遮熱といった効果がありますので、お悩みに応じて必要な機能の製品を選択しましょう。
注意点としては、網入りガラスや複層ガラスなど製品によって使用できない種類のガラスがあり使用した場合はガラスが割れてしまうことがあります。十分に取扱説明書などを読んでから使用しましょう。
屋外側の対策
屋外に設置するタイプの西日対策です。屋外側で光を遮るので、室内の温度上昇を抑えられます。
〇すだれ
すだれは昔から使用されてきた日差し避けで、ホームセンターで販売されています。軽くて引っ掛けるだけですので、庇(ひさし)や軒(のき)に吊り下げる部分があれば簡単に取り付けられれます。
安価ですが、それほど丈夫ではありません。また、風が強いときはゆれて窓に当たったり、飛んでしまう可能性もあり、つけたりはずしたりの手間があります。
〇シェード
シェードは、サンシェードやタープ、オーニングなど様々な名前で呼ばれる製品で、耐水性の高い合成繊維で作られたテントや庇のことです。
丈夫で長持ちしますがやや高価で、設置工事も合わせて購入する必要があります。
〇グリーンカーテン
窓付近で植物を育てることで、植物の葉などを利用して日差しを遮る方法です。
管理の手間がかかりますが、効果を発揮したことによる達成感や自然の気持ちよさを感じられます。
〇ルーバー
窓の外にルーバーと呼ばれる板や棒状のものを連続して設置することで光を遮ります。
形状や設置方法、電動と固定など様々種類がありますが、それぞれに効果が違います。しっかりとした構造ですので、製品及び工事の費用は高めです。
その他の対策
新築の計画段階であれば、設計や建材を考えることでも西日対策ができます。
〇間取りの工夫
西日が入らない間取りとすることは、西日対策の上でもっとも効果があります。
家の方位や周辺の状況によって間取りは大きく変わりますが、設計者の方へ西日の影響の少なくなるような間取りとなるようにお願いしましょう。
〇窓の工夫
西側の窓を少なくすれば、当然西日の影響は少なくなりますが、お部屋が暗くなってしまう恐れがあります。
スリット窓の配置と外壁を利用することでルーバーのように窓の正面以外の日差しを遮る、あるいは、地窓や高窓など窓の設置高さを変えることで西日に影響のない時間の光を取り入れる、といった方法があります。
間取りにも関係しますので、住宅のプランと合わせて光を取り込みつつも西日を遮るように工夫してみてはいかがでしょうか。
窓を減らしても暗くならないための「光ダクト」
西日を気にして対策をしすぎてしまうと、光を取り込みにくい家になり、お部屋が暗くなってしまうことがあります。
新築であれば、「光ダクト」を住宅に導入して、お部屋を明るくする方法もあります。
「光ダクト」は、家の日当たりの良い南側の窓や屋根についた天窓から取り込んだ光を、内面が鏡の管(ダクト)の内面を複数回反射させながら光を導き、暗いお部屋に届ける、という機能を持った住宅構造です。
西日が強く、窓から直接光を取り込みにくいお部屋でも、光ダクトを通じて別の窓からの光で明るくすることが出来ます。
「光ダクト」という考え方でいろいろな間取りや設計のアイデアが可能ですので、西日対策と合わせて「光ダクト」も検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
西日には、「まぶしい」、「お部屋が暑くなる」、「室内や人体に日焼けを生じる」といったデメリットがありますので、西日対策は非常に重要です。
西日対策には、カーテンやブラインド、遮光フィルムなどの室内から出来る方法、すだれやシェード、グリーンカーテンなどの屋外に設置する方法、そして、新築設計時の間取りや窓を工夫する方法があります。
ご状況に合わせて、必要な西日対策を検討して、人や住宅に優しい日当たり環境を作りましょう。