光ダクトは暗い部屋に光を導き明るくするための製品ですが、住宅に設置される「ダクト」という構造から、空気を流すこともできます。
最近では、おうち時間の長期化にともなって、お部屋の空気を気にされる方が増えてきています。光ダクトによって家の中を循環させた空気に清浄機能を付与することで、家全体の空気をきれいにすることが出来ると考えられます。
今回は、株式会社トルネックス様と協立エアテック株式会社様にご協力いただき、実際に新築住宅に設置した光ダクトに、循環ファン(協立エアテック社製)と電気式空気清浄機(トルネックス社製)を組み込むことで、光ダクトの機能を維持したまま、家の中の空気がきれいになるかを検証しました。
光ダクトを利用した空気清浄システム
光ダクトとは?
光ダクトとは、ダクト(管)の内面が鏡状になった構造や製品のことです。
屋根に設けられた天窓や外壁に設けられた側窓の室内側に光ダクトを設置することで、天窓や窓から入った光を光ダクトを通じて別の部屋へ、反射を繰り返して導きます。
都市部などの住宅地では、隣接した敷地に家があるため、側窓から十分な明るさが得られないことも多くあります。天窓も、通常は設置した直下のお部屋しか明るくできないため、住宅地の1階は暗くなってしまいがちです。
光ダクトを設置することで、隣家の影響を受けずに明るさを確保しやすい天窓から得られる光を1階まで効率よく運べるので、明るいお部屋をつくることができます。
光ダクトを利用した空気清浄システムのメリット
光ダクトを利用した空気清浄システムのメリットとして、まず、空気清浄機の置き場所が不要になることがあげられます。
近年ではお部屋の空気に対する意識も高まっており、空気清浄機が利用されることも多くなっています。
住宅の空気清浄機は各部屋に一台が一般的ですが、設置が簡単な分、それぞれに置き場所が必要で、電源コードも邪魔になってしまっています。光ダクトのシステムを使えば、空気清浄機の置き場所が集約され、室内がすっきりとします。
また、定期的なメンテナンスが簡単になるというメリットもあります。
空気清浄機は効果を維持するために、必ず定期的にメンテナンスを行わなければなりません。
光ダクトを利用した空気清浄システムであれば、前述のように1台で家中の空気がきれいになりますので、1台分のメンテナンスだけで済みます。
何台もの空気清浄機をそれぞれのメンテナンス期間ごとに管理して清掃や交換をする必要がなくなります。
光ダクトを利用した空気清浄システムの構造
光ダクトを用いて住宅の空気清浄を行うためには、光ダクトや住宅の構造を変更しなければなりません。
通常、ダクト内部にホコリが入り反射率が低下することを防ぐために、光ダクトは両端を透明の板で密閉されています。
空気を流すためには、ダクトの両端付近で2カ所が開いた状態にする必要があります。
次に、強制的に風が流れるように循環ファンと空気清浄機を設けます。
光ダクトに穴を開けただけでは、上下階の多少の温度差で空気は動くかもしれませんが、住宅全体の換気料と比べると少ないと考えられます。
住宅の容積など加味して適切な換気量のファンユニットと、接続可能な空気清浄機を設計して設置します。
循環ファンと空気清浄機の設置場所は機械室とするなど、間取りを考えなければなりません。
最後に、光ダクトとは別に、家の中に風の通り道を作ります。
家の中で空気を循環させるためには、ダクトから出た空気を家の中に広げて、家の中を通り、またダクトに入るような空気の通り道が必要です。
空気の通り道が無いと、家全体を空気が流れず、きれいな空気も回りません。
階段室や吹き抜けなどの家全体の構造、また、引き戸や欄間などのお部屋ごとの通風を組合せて家全体に十分に換気できるような工夫が必要となります。
今回は、これらの考え方をもとに、設計者やトルネックス様や協立エアテック様と十分に検討して実施しました。
検討の概要
検討建物
今回は、下記のような建物で検討を行いました。
表. 建物概要
所在地 | 東京都(23区内) |
構造 | 木造3階建て |
延床面積 | 80.56 m2 |
住宅換気方式 | 第一種換気(ダクトレス), 4か所 |
光ダクトサイズ | W775mm×D355mm-L5,030mm |
建物の断面模式図を下記の図に示します。光ダクトは、天窓採光の垂直型で、光反射鏡面複合板を利用した貼り込みタイプで光ダクトを形成しています。採光部となる天窓は、勾配が小さい屋根にも設置可能な日本VELUX社製のFCMフィックスタイプを採用しました。
図. 検討建物の断面模式図
光ダクトに接続する空気清浄機と循環ファンの外観は下図となります(模式図とは反対向きとなっています)。下側の装置がトルネックス社製の電子式集塵フィルタを利用した空気清浄機、上側の装置が協立エアテック社製の循環ファンとなります。
循環ファンで、図の右下にある穴とつながったフレキシブルダクトにより光ダクト内の空気を吸引します。吸引された空気を空気清浄機に通すことで空気をきれいにして、循環ファンの上部のダクトで3階天井付近に排出します。
図. 装置構成 上)循環ファン, 下)空気清浄機(トルネックス)
きれいな空気は、階段室や吹き抜けなどを利用して室内を循環し、また1階の光ダクト放光部から吸い込まれることで、家全体の空気をきれいに出来る仕組みとなっています。
評価方法
検討建物をモデル化し、光環境シミュレーションによって光ダクトの有無による床面照度を計算し、比較することで光ダクトの効果を評価しました。
サーキュレーション空気清浄がOFFの状態からONにした際の室内を、パーティクルカウンターにて空気1リットル中に含まれている粉塵量を測定することで空気清浄機能を評価しました。
検討結果
光ダクトによる明るさ向上の効果
下記に日中における光ダクト周辺の様子を示します。光ダクトからは室内を照らす十分な採光が得られていることが確認できます。
図. 検討建物の光ダクトの様子
光環境シミュレーションによって作成された春分12時晴天における1階鳥瞰図の疑似カラー画像を示します。上が光ダクトなし、下が光ダクト設置時の結果となります。
画像下側の階段付近を中心に中央の部屋の照度が大きく向上していおり、光ダクトによって室内の明るさが向上している結果が確認されました。
図. 光環境シミュレーションの照度向上効果 上)光ダクトなし、下)光ダクト設置
空気清浄機能の効果
屋外と室内各所で測定された1μmサイズの粒子数の時間変化の結果を下記に示します。
図. 空気清浄効果の検証結果
空気清浄機を稼動させた12時以降、屋外粉塵量が増加する中、室内粉塵濃度は減少していることが確認されました。
運転開始4~5時間で室内粉塵量の減少傾向は安定し、それ以降空気清浄度を維持していました。室内全ての測定ポイントも粉塵量の減少を確認でき、吹き出し直下(空気清浄機後)の⑧の測定ポイントの清浄度は他ポイントに比べ高いことがわかりました。
以上の結果から、1階から3階に向かう空気移動に於いて光ダクトを空気循環経路に、空気清浄することを確認しました。
まとめ
光ダクトを通風に利用した室内循環による空気清浄の効果を検証しました。
室内の明るさ向上と室内粉塵の低下が見られたことから、光ダクトの効果を損なうことなく空気清浄機能を付与することができることが確認されました。
住宅全体の設計も考慮する必要がありますので、もし検討したい方がおられましたら、お問い合わせフォームからご相談ください。