吹き抜けは、建築物内に開放感を与え、その建築の象徴的な場所になりやすい空間です。
吹き抜けでは、窓やトップライトによって自然光を取り入れることで、屋外の様な明るさが得られるように設計されますが、場合によっては暗くなってしまうこともあります。
鋼鈑商事では、吹き抜けにおける明るさのご相談もあり、明るさのシミュレーション技術を使って可能な限り協力しています。今回はその相談事例をご紹介します。
鋼鈑商事の明るさシミュレーション技術とは?
鋼鈑商事では、光ダクトを提案するために、シミュレーションによる光解析技術を磨いてきました。
光ダクトは大きさや設置箇所、方位などによって性能が大きく変わります。
そのため、「本当に明るくなるのか?」、という不安の声や、「(光ダクトを導入してから)暗い」と思われないように、光ダクトは事前のシミュレーションによる「明るさの提案」を必要とする製品でした。
光ダクトの性能を調べるためのシミュレーションからはじまり、複雑な形状を持った反射板や照明器具、光ダクトや照明によって得られる室内の照度、光や色の見え方、さらには、光ダクトを含めた空間全体の様子と、光ダクトを提案するために様々なシミュレーションを行ってきました。
今では、光環境に関する幅広いシミュレーションが可能となっています。
さらに、事例も増えたため、シミュレーションによって提案した建築物の明るさを比較するなどし、シミュレーションが高い精度で設置後の明るさと一致するように随時改善も行っています。
>>鋼鈑商事の明るさシミュレーション技術の詳細はこちら
光ダクトだけじゃない! 設計時における明るさの課題解決にも協力します!
明るさでお悩みの方へは、鋼鈑商事の光ダクト「どこでも光窓」をご提案しています。
一度光ダクトを利用していただいた方やご紹介いただいた方、あるいは、別件でお問い合わせいただいた方など、様々なお悩みをご相談いただく事も増えています。
暗くなりそうな箇所があるが、明るくする方法はないか?
省エネ性の問題から開口を大きくとりたくないが、明るさは十分か?
大きな吹き抜けを作りたいが、底や下階が暗くならないか?
光ダクトの素材や技術で、新しいデザインを作れないか?
などなど、光ダクトに限らず、建築物に応じた明るさに関するご相談があり、鋼鈑商事で解決できることには積極的に協力しています。
今回は、特にご相談の多い、建築物の吹き抜け周辺に関する明るさのシミュレーション事例をご紹介します。
吹き抜けの設計時の提案事例
住宅の吹き抜け(坪庭)
2階建ての戸建住宅で、吹き抜けになった坪庭の明るさに関するご相談案件です。
設計の方は「2階建てで吹き抜けはそれほど深くないが、植物が育つ程度の明るさがえらえるかどうか」、とお施主様からご相談を受けて、鋼板商事へお問い合わせいただきました。
明るさのシミュレーションは、上図のように3Dでシンプルにモデルを作り、壁面や透過素材などの条件を決め、ある日時・天気における自然光を計算することで行います。
吹き抜け以外で光に影響しない室内などは設定せず、逆に、明るさのシミュレーションを行いたい箇所は細かく設定します。
モデル作りは時間がかかり、細かいモデルとなればなるほどシミュレーションの計算時間も多くかかるため、できるだけシンプルなモデルでシミュレーションを行っています。
得られた明るさのシミュレーション結果において、照度の疑似カラー画像を見ると、全体の照度分布がわかりやすくなり、暗い箇所が判断できます。
この事例であれば、吹き抜けの上から下に行くにつれて徐々に暗くなり、また樹木の葉の部分で大きく光が遮られていることがわかります。
実際、1階部分の窓から見ると、非常に暗い印象となってしまっていました。
このように、吹き抜けの形状や障害物なども加味して明るさについてアドバイスしています。
ビルの吹き抜け(エコボイド)
ビルのコア部分に吹き抜けを設けて、デザイン性や明るさ向上を検討した案件です。
鋼鈑商事では、同様に高層ビルの吹き抜けに、光の反射素材をコントロールした内装パネルを用いることで、吹き抜け自体を明るくする事例があり、そこからご相談いただきました。
ビルの吹き抜けでは、階数が多くなるにつれて、下階が井戸の底のように暗くなってしまいます。
鋼鈑商事の明るさのシミュレーションでは、吹き抜けの光だけでなく、外壁面の窓から入る光も含めた室内の状況を見ることができます。
現状で暗いようであれば、吹き抜けの壁面の素材を提案しています。
また、吹き抜けの寸法や方位についても可能な範囲でアドバイスしています。
最近では、ビルの吹き抜けをエコボイドと呼び、採光と室内の換気経路を兼ねた建築が見られるようになっています。
ですが、高層になる場合には十分な採光ができません。エコボイドを検討しているようであれば、明るさのシミュレーションについてもご相談ください。
マンションの階段室
一般的な吹き抜けとは少し異なりますが、低層のマンションでも部分的に暗くなることがあります。
明るさとデザインのアクセントとして、光ダクトを導入できるかどうかをご相談いただきました。
光ダクトを導入した場合について、階段吹き抜け部分の明るさシミュレーションによる輝度を解析しました。
全体的に暗い所で、光ダクトの光を壁に照射することで光のデザインとして利用できることを確認しました。
照度で比較してみると、全体が100lx程度あるため、十分に採光できる箇所に採光部を設置できないこともあり、全体の明るさに影響を与えるほどの効果は得られませんでした。
光ダクトは、設置条件や時期・時間によって効果が異なります。
明るさシミュレーションも含めて事前に効果を十分に検証しています。
効果が得られない場合には、光ダクト自体の設計を見直したしたり、別の採光方法をご提案しています。
まとめ
明るさを取るための吹き抜けですが、狭くて深い形状や複雑な形状、吹き抜けを作る壁面などによっては、十分な明るさが取れないこともあります。
完成後に暗くならないように、設計時の事前の明るさシミュレーションを行い、必要となる明るさが得られているかを確認することをお勧めします。